新「iPad Air」「iPad mini」で見えてきた“2つの未来”とは?
米Appleは3月11日(現地時間、以下同)に、スペシャルイベントの招待状をメディア関係者に送付している。3月25日午前10時(日本時間では26日午前2時)開催のスペシャルイベントでは、新モデルの登場が期待されていたが、新製品はその前週となる18日に突如発表となった。
発表されたのは、「iPad Air」と「iPad mini」の新モデルだ。iPad miniの復活は以前からうわさがあったが、iPad Airがラインアップに復帰すると誰が予想していただろうか。実際には旧「10.5インチiPad Pro」のリフレッシュ版をiPad Airとして再定義したようにみえるが、何とこれでiPadは合計5モデルを展開することになる。
バーティカル用途市場や教育向けを意識しているベーシックな「無印のiPad」を除けば、いずれもプロセッサに「iPhone XS」などと同様の「A12 Bionic」(iPad ProはA12X Bionic)を搭載。この世代の「Neural Engine(ニューラルエンジン)」を、端末側の機械学習処理のベースラインとして定義する意図が透けて見えてくる。
また、iPad Air以上の製品は、本体カバー兼キーボードの「Smart Keyboard」(iPad ProはSmart Keyboard Folio)が用意されており、キーボードでの操作という選択肢を用意している点にも注目しておきたい。
シリーズのラインアップとして、パフォーマンスの基礎レベルを引き上げた上で、価格と画面サイズのバリエーションを強化。その先にあるには、翌週のスペシャルイベントと、6月に控えた開発者会議「WWDC19」で一部が明らかになるであろう次期iOS(のうちのiPad向け機能)が、大きく進化する布石ではないかと考えられる。
新iPadはスペシャルイベントの布石か
25日に開催されるスペシャルイベントの内容は今まで同様に「極秘」扱いだ。しかし、うわさされているのはサブスクリプション型……すなわち、毎月固定金額を支払うことで特定ジャンルのコンテンツを自由に楽しめる新サービスだとみられている。
招待状はGIFアニメーションの形式になっており、「3」「2」「1」「It's show time」とフィルム映画の冒頭カウントダウンを思わせる作りだ。一つは、ニュースや雑誌といった紙メディアの電子版を見放題にするサービスといわれるが、もう一つは「Netflix」のような固定額での映像コンテンツ配信サービスが始まる可能性が極めて高い。
米国から始まっていたニュースアプリ「Apple News」だが、広告売り上げが苦戦していると伝えられており、サブスクリプション型での再設計を迫られているのかもしれない。従来のApple Newsと新サービスが並行して提供されるのかどうか、コンテンツ提供者がどこまで広がるのか、そしてグローバルでのサービスになるのか、など興味は尽きない。
一方で映像配信に関しても謎が多い。Appleがハリウッドにオフィスを構えていることは誰もが知っているが、彼らがどのような動きをしているのか、詳細な情報は伝わってきていない。当然ながらライバルが存在し、1兆円を超えるともいわれるNetflixのコンテンツ投資に対して、独自の価値を提供できなければ成功はないことをAppleは承知しているはずだ。
いずれにしろ、これらは25日に詳細が発表されるが、画面サイズ、価格、性能ごとに並べられたiPadのモデル数増加は、単に細やかにラインアップを増加させることで売り上げを最大化するだけでなく、これら「サブスクリプション型サービスのコンテンツビュワーとしての役割」があるとみられる。
新発表の2モデルであるiPad AirとiPad miniは、いずれも広色域の「P3」(Display P3)に対応。色温度を最適化する「True Tone」を搭載し、500nitsの最大輝度を持つフルラミネーションの高コントラスト液晶を搭載している。サイズを別にするならば、表示品質はiPad Proと同等といえるだろう。
Appleの映像配信サービスがHDR(High Dynamic Range)対応の映像ソフトなどを完備し、画質を訴求するのであれば、こうしたディスプレイの品質を“そろえておき”、体験の質を保証することに意味があるのかもしれない。
ただ、価格面を考えるならば、これら2製品の最大のライバルは無印の「9.7インチiPad」(第6世代)になるはずだ。ディスプレイの品質やパフォーマンスに違いがあるとはいえ、メディアタブレットやネットサービスへのカジュアルな窓として、十分な性能と使いやすさを提供しているからだ。
WWDC19ではiPadの「プロダクティビティ」が大幅な進化か
コンテンツビュワーとしての役割に加えてもう一つ、新モデルから示唆されるのは、iPad Airの復活に伴ってキーボードが快適に使える中価格帯のiPadを用意することで、「プロダクティビティ(生産性)ツールとしてのiPadを実体験として知る人たちを育てたい意図」があるのではないか。
タブレット型端末には、スマートフォンよりも大きな画面でコンテンツを受け身で楽しむためのベターなツールという性格もある。しかし、何らかの価値やコンテンツを生み出すプロダクティビティツールとしての認知を広げなければ、単なるコンテンツビュワーにしかならない。
今回、第1世代ながら(2モデルともに)「Apple Pencil」に対応したのも、高価なiPad Proへの「入口」としてiPad Airを置くことで稼働端末を増やし、アプリ開発者たちに魅力的なプラットフォームであることを訴求したいと考えたからではないだろうか。
筆者は2018年10月末の新型iPad Pro登場当初から、2019年のWWDCでiOSのiPad向け機能および操作性に大きな改良が施されるのではないか、と予想している。iPad Proは確かに素晴らしいパフォーマンスを備えているが、パソコンに比べると、振る舞いや日本語入力などの機能性、汎用(はんよう)性などに一定の制約がある。
「iPadをパソコン的に扱う際の使いやすさを向上させること」が、新しいiOSの一つのテーマであり、それにあらためて取り組もうとしているのではないか、という予想がにわかに現実味を帯びてきた。
初代iPad Proが登場した翌年(2016年)のWWDCでも、iPad向けに大幅なiOSの強化が行われた。今回はそれ以上のアップデートになる可能性もある。操作性や機能、入力のしやすさなどでパソコンと比べられるレベルにまで引き上げることができれば、iPadの適用範囲はさらに広がっていく。
またWWDCを一つの節目として考えるならば、iPad mini以上の全てのiPadに最新世代のNeural Engine内蔵SoC(System on a Chip)が採用されることになったことも大きい。iPhone側も「iPhone XR」以上は全て同じNeural Engineだ。これを用いたAR(拡張現実)機能、機械学習を用いたアプリなど、(サードパーティーと仕込んであるであろう)新たな仕掛けが用意されているのかもしれない。
ハードウェア基盤を整えた上で、OSアップデートで製品そのものの機能やアプリ向け開発環境の底上げを行うのはAppleの毎回のパターンだけに、6月のWWDCに注目だ。
発表されたのは、「iPad Air」と「iPad mini」の新モデルだ。iPad miniの復活は以前からうわさがあったが、iPad Airがラインアップに復帰すると誰が予想していただろうか。実際には旧「10.5インチiPad Pro」のリフレッシュ版をiPad Airとして再定義したようにみえるが、何とこれでiPadは合計5モデルを展開することになる。
バーティカル用途市場や教育向けを意識しているベーシックな「無印のiPad」を除けば、いずれもプロセッサに「iPhone XS」などと同様の「A12 Bionic」(iPad ProはA12X Bionic)を搭載。この世代の「Neural Engine(ニューラルエンジン)」を、端末側の機械学習処理のベースラインとして定義する意図が透けて見えてくる。
また、iPad Air以上の製品は、本体カバー兼キーボードの「Smart Keyboard」(iPad ProはSmart Keyboard Folio)が用意されており、キーボードでの操作という選択肢を用意している点にも注目しておきたい。
シリーズのラインアップとして、パフォーマンスの基礎レベルを引き上げた上で、価格と画面サイズのバリエーションを強化。その先にあるには、翌週のスペシャルイベントと、6月に控えた開発者会議「WWDC19」で一部が明らかになるであろう次期iOS(のうちのiPad向け機能)が、大きく進化する布石ではないかと考えられる。
新iPadはスペシャルイベントの布石か
25日に開催されるスペシャルイベントの内容は今まで同様に「極秘」扱いだ。しかし、うわさされているのはサブスクリプション型……すなわち、毎月固定金額を支払うことで特定ジャンルのコンテンツを自由に楽しめる新サービスだとみられている。
招待状はGIFアニメーションの形式になっており、「3」「2」「1」「It's show time」とフィルム映画の冒頭カウントダウンを思わせる作りだ。一つは、ニュースや雑誌といった紙メディアの電子版を見放題にするサービスといわれるが、もう一つは「Netflix」のような固定額での映像コンテンツ配信サービスが始まる可能性が極めて高い。
米国から始まっていたニュースアプリ「Apple News」だが、広告売り上げが苦戦していると伝えられており、サブスクリプション型での再設計を迫られているのかもしれない。従来のApple Newsと新サービスが並行して提供されるのかどうか、コンテンツ提供者がどこまで広がるのか、そしてグローバルでのサービスになるのか、など興味は尽きない。
一方で映像配信に関しても謎が多い。Appleがハリウッドにオフィスを構えていることは誰もが知っているが、彼らがどのような動きをしているのか、詳細な情報は伝わってきていない。当然ながらライバルが存在し、1兆円を超えるともいわれるNetflixのコンテンツ投資に対して、独自の価値を提供できなければ成功はないことをAppleは承知しているはずだ。
いずれにしろ、これらは25日に詳細が発表されるが、画面サイズ、価格、性能ごとに並べられたiPadのモデル数増加は、単に細やかにラインアップを増加させることで売り上げを最大化するだけでなく、これら「サブスクリプション型サービスのコンテンツビュワーとしての役割」があるとみられる。
新発表の2モデルであるiPad AirとiPad miniは、いずれも広色域の「P3」(Display P3)に対応。色温度を最適化する「True Tone」を搭載し、500nitsの最大輝度を持つフルラミネーションの高コントラスト液晶を搭載している。サイズを別にするならば、表示品質はiPad Proと同等といえるだろう。
Appleの映像配信サービスがHDR(High Dynamic Range)対応の映像ソフトなどを完備し、画質を訴求するのであれば、こうしたディスプレイの品質を“そろえておき”、体験の質を保証することに意味があるのかもしれない。
ただ、価格面を考えるならば、これら2製品の最大のライバルは無印の「9.7インチiPad」(第6世代)になるはずだ。ディスプレイの品質やパフォーマンスに違いがあるとはいえ、メディアタブレットやネットサービスへのカジュアルな窓として、十分な性能と使いやすさを提供しているからだ。
WWDC19ではiPadの「プロダクティビティ」が大幅な進化か
コンテンツビュワーとしての役割に加えてもう一つ、新モデルから示唆されるのは、iPad Airの復活に伴ってキーボードが快適に使える中価格帯のiPadを用意することで、「プロダクティビティ(生産性)ツールとしてのiPadを実体験として知る人たちを育てたい意図」があるのではないか。
タブレット型端末には、スマートフォンよりも大きな画面でコンテンツを受け身で楽しむためのベターなツールという性格もある。しかし、何らかの価値やコンテンツを生み出すプロダクティビティツールとしての認知を広げなければ、単なるコンテンツビュワーにしかならない。
今回、第1世代ながら(2モデルともに)「Apple Pencil」に対応したのも、高価なiPad Proへの「入口」としてiPad Airを置くことで稼働端末を増やし、アプリ開発者たちに魅力的なプラットフォームであることを訴求したいと考えたからではないだろうか。
筆者は2018年10月末の新型iPad Pro登場当初から、2019年のWWDCでiOSのiPad向け機能および操作性に大きな改良が施されるのではないか、と予想している。iPad Proは確かに素晴らしいパフォーマンスを備えているが、パソコンに比べると、振る舞いや日本語入力などの機能性、汎用(はんよう)性などに一定の制約がある。
「iPadをパソコン的に扱う際の使いやすさを向上させること」が、新しいiOSの一つのテーマであり、それにあらためて取り組もうとしているのではないか、という予想がにわかに現実味を帯びてきた。
初代iPad Proが登場した翌年(2016年)のWWDCでも、iPad向けに大幅なiOSの強化が行われた。今回はそれ以上のアップデートになる可能性もある。操作性や機能、入力のしやすさなどでパソコンと比べられるレベルにまで引き上げることができれば、iPadの適用範囲はさらに広がっていく。
またWWDCを一つの節目として考えるならば、iPad mini以上の全てのiPadに最新世代のNeural Engine内蔵SoC(System on a Chip)が採用されることになったことも大きい。iPhone側も「iPhone XR」以上は全て同じNeural Engineだ。これを用いたAR(拡張現実)機能、機械学習を用いたアプリなど、(サードパーティーと仕込んであるであろう)新たな仕掛けが用意されているのかもしれない。
ハードウェア基盤を整えた上で、OSアップデートで製品そのものの機能やアプリ向け開発環境の底上げを行うのはAppleの毎回のパターンだけに、6月のWWDCに注目だ。
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