12.9型iPad ProとSurface Pro 6、「キーボードも使えるタブレット」としてはどちらが優秀?

前回の記事では、11型iPad ProとSurface Goの2製品について、テキスト入力ツールとしての実力を検証した。10~11型であるこの両モデルには、いずれもサイズ違いにあたる兄弟モデルが存在している。12.9型iPad ProとSurface Pro 6がそれだ。
前者は純粋な画面違いのモデルでスペックもほぼ同様なのに対し、後者はモデルこそ別物ながら構造が酷似しているために兄弟モデルとして扱われがちという、位置付けについてはそれぞれ異なるのだが、持ち歩いての利用に適したタブレットとキーボードの組み合わせとしては、いずれも候補に入ってくる製品だ。
今回は、画面サイズに加えてキーボード追加時の重量もほぼ同じと、ライバルと言っていいこの両製品について、テキスト入力ツールとして見た場合の使い勝手を検証しつつ、前回の2モデルとの相違点についてもチェックしていく。キーボードも使えるタブレットの導入を検討している人の参考になれば幸いだ。
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12.9型のiPad ProとSmart Keyboard Folio
まず、両製品のアウトラインをざっと紹介しよう。12.9型iPad Proは、名前の通り、12.9型の大画面が特徴で、ボディーサイズは約214.9(幅)×280.6(奥行き)×5.9(厚さ)mmと、A4サイズ(210×297mm)とほぼ同等だ。ちなみに現行モデルは第3世代で、Face IDの採用でホームボタンが省かれたことで、画面サイズを保ちつつぎりぎりまで小型化されている。
別売のカバー兼外付けキーボード「Smart Keyboard Folio」も、本体の横幅に合った実測281mmというビッグサイズだ。11型のモデルは横幅が実測248mmだったので、約33mmも横に広がったことになる。マグネットで本体と吸着し、Smart Connectorで接続する仕組みは同じだ。
次はSurface Pro 6とタイプカバーを細かく見ていこう。
Surface Pro 6とタイプカバー
一方のSurface Pro 6は、2in1タイプのSurfaceとしては最上位のモデルにあたり、画面サイズは12.3型だ。ボディーサイズは約201(幅)×292(奥行き)×8.5(厚さ)mmと、こちらもA4サイズ(210×297mm)とほぼ同等になる。
画面解像度は2736×1824ピクセル(267ppi)とアスペクト比は3:2で、この手のデバイスとしては珍しい比率だ。一般にワイド比率などといわれる16:10よりは、iPad Pro(2732×2048ピクセル、264ppi)が採用している4:3にわずかに近い。
オプションとなるカバー兼外付けキーボードのタイプカバーは、PC本体とマグネットで吸着する仕組みなど、基本的な構造は前回紹介したSurface Goと同様で、キーボードの手前にはタッチパッドも備えている。今回は試用していないが、ラインアップの中には指紋認証機能を搭載したモデルも用意されている。
画面サイズがキーボードのサイズにも影響
前回紹介したモデルとのサイズの違いは、以下の写真をご覧いただくのがわかりやすいだろう。基本的に構造は同じで、大きさのみが異なる格好だ。いずれも画面サイズの拡大に合わせてキーボードの横幅も広がったことで、キーピッチも広がり、快適なタイプが可能になっている。
ただしアスペクト比がいずれも3:2のSurfaceと異なり、11型iPad Proはアスペクト比が4:3よりもわずかに横長なので、並べて12.9型モデルを置くと、横方向以上に縦方向に画面が拡大したように見える。
次のページでは、両製品をもう少し詳しく比較していく。
十分なキーピッチを備え余裕のある入力が可能
両製品を閉じた状態で重ねると、長辺はSurface Pro 6の方が長く、短辺はiPad Proの方が長い。つまりSurface Pro 6の方が細長いイメージだ。
これは言うまでもなく、画面のアスペクト比の違いがそのままボディーサイズに反映されているためだが、Surface Pro 6はベゼルもかなり厚いため、12.3型という画面サイズに比べて、ボディーサイズはやや大柄な印象を受ける。
ベゼル幅が広いということは、その分ボディーの幅も広く、それに合わせて設計されているキーボードの横幅にも余裕があるわけだが、Surface Pro 6のタイプカバーはiPad ProのSmart Keyboard Folioと比べて横のキー数が多い列もあり、キーピッチそのものはほぼ互角(約19.5mm)だ。
そのため、実際にタイピングを行っても、両製品ともにキーピッチにはかなり余裕があり、タイプ時に指が干渉することはまずない。前回の2モデルに比べると、圧倒的に快適だ。特にSurface Pro 6のタイプカバーは、前回のSurface Goで見られたような行ごとのキーのズレもないので、タイプミスも起こりにくい。
ただ個人的には、12.9型iPad ProのSmart Keyboard Folioは、ホームポジションから遠い位置にあるキー、具体的には右上のBackSpaceキーなどに、指が届きにくい印象だ。
その理由は、Smart Keyboard Folioはキーの反発力がやや強いため、右端にあるBackSpaceキーやEnterキーについては小指ではなく薬指でタイプしているという、筆者の個人的な癖によるものだ。
これがSurface Pro 6のタイプカバーの場合、ホームポジションからBackSpaceキーまでの距離はiPad ProのSmart Keyboard Folioと同等でも、キーがやや軽く感じられ、問題なく小指で押せる。そうした意味では、より自然なタイピングが可能だ。
今回使用している機材はともに新品というわけではないため詳細は不明だが、どのキーも同じ荷重とみられるiPad ProのSmart Keyboard Folioと異なり、Surface ProのタイプカバーにおけるBackSpaceキーやEnterキーは、中央部のキーよりも荷重がわずかに軽く感じられ(入力音も若干違う)、これによって小指でタイプしやすくなっている可能性はありそうだ。
次はSurface Pro 6とタイプカバーを使う際のコツを取り上げる。
タイプカバー利用時のちょっとしたコツ
なお、Surface Pro 6はSurface Goと同様、キーボードに角度をつけ、底面から若干浮かせた状態でタイプすることも可能だが、キーボードの面積がSurface Goに比べて広いためか、タイプ中にキーボードが若干しなりがちという問題がある。
正確な入力に支障をきたすわけではないが、中央付近ほど入力音も響きがちで、全く気にならないかというとウソになる。個人的には、キーボードがデスクに接地するレイアウトで使うことをお勧めする。
大画面ゆえブラウザを参照しながらの入力も可能
ところで、一般的にテキストを入力するといっても、そのスタイルはさまざまだ。エディタだけを起動して全画面で入力することもあれば、別のウィンドウで開いた書類やブラウザを参照しながら入力することもあるだろう。
前回紹介した11型iPad ProやSurface Goの場合、画面サイズそのものが小さいことから、後者のスタイルはかなり難しかった。そもそもiPadの場合、画面上に2つのアプリを同時に表示するためには、Slide OverまたはSplit Viewという画面分割機能のいずれかを使う必要があり、重ねたウィンドウを切り替えるスタイルに比べ、自由度はあまり高くない。
しかし今回の12.9型iPad ProやSurface Pro 6の場合、画面サイズが広いことから、資料を開きつつ、別画面でテキスト入力を行うのも簡単だ。特に12.9型iPad Proでは、Slide OverまたはSplit Viewでも、十分な表示面積を確保できる。
11型iPad Proでも、Split ViewおよびSlide Overは利用可能なのだが、実際に使い比べてみると、やはりサイズ的に無理があると感じる。特に2ペイン方式のエディタを使っている場合、11型で画面を左右に分割して作業を行うのはまず絶望的だ。画面サイズが広いことは、テキスト入力のスタイルをより自由にするという意味でも、価値が高いことを改めて実感させられる。
どのような人にお勧めできる?
最後に重量と価格について触れておこう。重量については、12.9型iPad ProとSmart Keyboard Folioの組み合わせは実測で約1042g、Surface Pro 6とタイプカバーの組み合わせは実測で約1095gと、ほぼ同等だ。
前回の2製品はいずれも800g未満で、持ち歩きには最適だったが、さすがに1kgを超えるとなると、モバイルノートでも同等レベルの製品はあるだけに、大きなメリットにはなりづらい。可搬性を優先するならば、入力の快適性および性能が多少落ちても、最終的に前回の2モデルのいずれかという結論に落ち着いても不思議ではない。
価格については、Surface Pro 6は最小構成でも約13万円(税込み、以下同)、ハイエンドな構成だと約29万円と、ノートPCと同等レベルだ。タイプカバーも1万7712円~2万952円と高めだ。製品そのものに不満はないのだが、いかんせんこの価格になると、用途がテキスト入力オンリーでは、なかなか手を出しにくい。競合となるのは、むしろノートPCであり、今回試していないSurfaceペン(1万2744円)による手書き入力など、何らかのメリットを見出したいところだ。
とはいえ、Surfaceは定期的にキャンペーンが行われており、現時点ではMicrosoft Store限定で本体とアクセサリーの同時購入で最大3割引となる「Surface Pro 6 お買い得セット」が実施されている。
一方の12.9型iPad Proも、最も容量が少ないWi-Fiモデル(64GB)とSmart Keyboard Folio(2万4624円)の組み合わせで14万円台、1TBのWi-Fi+Cellularモデルをベースにすると25万円台と、こちらもかなりのお値段だ。1TBモデルについては他の容量よりもメモリが多く(4GB)、快適さ重視ならば他の容量よりお勧めだが、価格の高さはいかんともしがたい。
ただ前回も述べたように、iPad Proの日本語入力システムはいまいちこなれておらず、上記の価格も踏まえて、テキスト入力を主目的としてiPad Proを一から購入するのは考えにくい。既にiPad Pro本体を所有しているユーザーが、テキスト入力の効率化を目的としてSmart Keyboard Folioを追加で購入するというのが、一般的な流れと言っていいだろう。

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