ソニーNCヘッドホン「WH-XB900N」レビュー - 3万円切りでコスパ良し、ライバルは1000X!

ソニーから3万円を切るお手頃価格で、アクティブノイズキャンセリング(NC)を搭載したEXTRA BASSシリーズのBluetoothヘッドホン「WH-XB900N」(実売約29,600円)が発売されました。シリーズ名からは低音重視の元気でやんちゃなヘッドホンを想像しそうですが、音もルックスも大人が普段使いで楽しめる、充実の出来映えでした。飛行機内で試したNC機能の完成度もお伝えしましょう。
大人っぽいデザインになった
EXTRA BASS(エクストラベース)は「迫力の重低音再生」を看板に掲げるソニーのポータブルオーディオのシリーズです。現行のラインナップにはヘッドホンやイヤホン、AIアシスタントを搭載するスマートスピーカーを含むワイヤレススピーカーがあります。
今回使ったWH-XB900Nは、10月5日に発売されたばかりのNC機能を搭載したワイヤレスヘッドホン。2017年に発売された「MDR-XB950N1」の後継機種です。
外観をXB950N1と比べると、正円型だったハウジングは楕円形になり、イヤーパッドは薄くなって見た目がスリム&スマートになりました。今回借りたモデルはブラックですが、このほかにもダークで落ち着いた雰囲気のブルーがあります。スーツスタイルにも合わせやすい外観なので、大人の音楽ファンにもおすすめです。
イヤーカップがスリムになっても、頭を自然に包み込むような心地よい装着感は前機種よりもさらに向上しています。頭の形に無理なくフィットするので、装着しても頭が大きく見えないのが嬉しいところ。重さがXB950N1より約36g軽くなったことも、装着時の負担軽減につながっています。
タッチセンサーリモコンやアプリ対応も充実
XB950N1から大きく改善されたポイントのひとつは、右側ハウジングにタッチセンサーコントロールパネルを搭載したこと。タッチパッドを内蔵する側面に指で触れて、上下にスワイプすれば音量の上下、左右が曲送り・戻しになります。これは慣れるとボタン式のリモコンよりも便利さが実感できます。音楽の再生・停止はタッチパッドをダブルタップすることで操作できます。シングルタップではないので、うっかりパネルに触れて音楽再生をいいところで止めてしまう、といった誤操作が起きません。
ソニーのワイヤレスNCヘッドホンのフラグシップ「WH-1000XM3」に搭載されている、クイックアテンションにも対応しています。右のイヤーカップを手のひらで覆うように触れると、再生中の音楽のボリュームを一時的に下げてマイクで外の環境音を取り込む機能で、ヘッドホンをしたまま駅や空港のアナウンスを聞いたり、買い物の時にレジで会話もできます。
NC機能については、XB950N1よりも多機能になっています。モバイルアプリの「Sony Headphones Connect」と連携することで、上位モデルのWH-1000XM3が対応する「アダプティブサウンドコントロール」に、EXTRA BASSシリーズのヘッドホンとして初めて対応し、20段階で外音取り込みの強弱を調節できます。圧縮音源の高音域をクリアに再現する「DSEE」や、マニュアル設定とカスタマイズを含む11種類のプリセットを切り替えられるイコライザーも備えています。
LDACやaptX HDといった音質重視のBluetoothオーディオコーデックをサポートし、対応するスマホやポータブルプレーヤーとワイヤレス接続して、ハイレゾに迫る高音質が楽しめます。ただし、エクストラベースのために専用開発した振動板を搭載する40mm径ドライバーは、ハイレゾ対応ではありません。ここがハイレゾ対応の1000Xシリーズ、あるいはh.earシリーズのヘッドホンと大きく違います。
クリアでスピード感ある低音が心地良い
気になる音質はiPhone 11と、Google Pixel 3 XLにもつないでaptX再生のサウンドを確かめてみました。
エクストラベースというネーミングに引っ張られる先入観をいい意味で裏切ってくれる、バランスの良さが魅力です。低音はクリアでスピード感もあり、アップテンポなEDMやジャズの楽曲は切れ味鋭いビートが心地よく感じられます。
iPhoneで聴くとボーカルの肉付きがしっかりと感じられ、Pixel 3 XLでは輪郭がより鮮明になって音像の立体感が増してきます。AACとaptXのコーデックの特性が素直に音に反映されているかもしれません。高域再生も雑味がなく、ピアノやエレキギターのハイトーンがしっかりと鳴ってくれます。ハイレゾ対応のヘッドホンではないものの、音場の見晴らしも良く、中高域の快調感がとても滑らかに感じられます。
付属するヘッドホンケーブルを接続すれば有線リスニングもできますが、本体の電源がオフの状態だと音が少し痩せて感じられるため、基本的には有線リスニングの際も本体の電源はオンにして使いたいところ。電源オフ時の有線リスニング対応は、バッテリー残量がなくなったときなど不測の事態のバックアップ程度に捉えるべきだと思います。
DSEEをオンにすると、高さ方向により豊かな音場の広がりが感じられます。どんなタイプの楽曲にも効果的なので、基本はオンにしたまま使うべきでしょう。
ロックやポップス系の楽曲にはやや上品に聴こえてしまう感触もありました。WH-XB900Nでは、楽曲やリスニングシーンに合わせてアプリに搭載されているイコライザーを積極的に使っても良いと思います。
WH-XB900NのNC機能はフィードフォワードマイクだけで環境音を拾って解析をかけるため、フィードバックマイクを合わせて使うハイブリッド方式のWH-1000XM3に比べると、NC効果は浅く穏やかです。飛行機の中や地下鉄に乗るときなど大きめの騒音に囲まれる場所で、元気が出るロックやポップスをガツンと鳴らしたい時には「Excited」「Bass Boost」「Vocal」などのプリセットEQが効果を発揮しました。
行動に合わせてNC自動調整。オン/オフで使い分け
アダプティブサウンドコントロールは、ペアリングしているスマホの加速度センサーの情報を元に、アプリが「止まっている時 / 歩いている時 / 走っている時 / 乗り物に乗っている時」の4つの行動パターンに合わせて、NCと外音取り込みのバランスを自動的に調節してくれる機能です。状況判断はスマホの内蔵センサーの品質にも左右されますが、「止まっている」ことを検出してから設定を切り替える時間は、その長短をアプリから選択できるようになっています。もし停車時間が長めな通勤電車に乗りながらヘッドホンを使うときには有効です。
飛行機で使ったときは、機内で身動きせずにじっとしていると「止まっている」と判定されることがありました。機内ではNCをフルに効かせたい時間の方が長いので、アダプティブサウンドコントロールはオフにしたほうが気持ちよく使えると思います。
長旅では、NC機能をオンにした状態で連続30時間の音楽再生が楽しめるバッテリー性能がとても頼もしく感じられます。海外旅行で機内に充電器を持ち込む必要はなさそうですが、充電用の端子がUSB Type-Cなので、スマホなど一緒に機内に持ち込みそうな電子機器の充電器が兼用できて便利です。10分の充電で約1時間の再生ができるクイック充電機能もあるので、バッテリー切れの心配はなさそうです。
ソニーのワイヤレスNCヘッドホンと言えば1000Xシリーズが有名ですが、現行モデルのWH-1000XM3は4万円近い高級機なので、手が届きにくいという人も多いでしょう。
WH-XB900Nは、WH-1000XM3より1万円以上も安価でありながら、機能は1000Xシリーズに迫る充実ぶりが魅力的。旅行や通勤の時間もカジュアルに使えるワイヤレスNCヘッドホンが欲しい人には、WH-XB900Nも選択肢としておすすめです。初めてのNCヘッドホンとしても大いに満足させてくれるでしょう。

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